コムクドリ Agropsar philippensis
分類 スズメ目ムクドリ科
体長 16cm (スズメより一回り大きいくらい)

コムクドリってどんな鳥?
コムクドリがどこに住んでいて、どんな生活をしている鳥なのかを
ご紹介します
ムクドリとは親戚関係?
ムクドリのように悪さをするの?
コムクドリとムクドリの違いや
関係性についてご紹介しま す
上級者向け!
コムクドリの研究史について
簡単にご紹介し、現状の課題に
ついてご紹介します
コムクドリはどんなところにいるの?
コムクドリは4月下旬頃に日本に渡ってきて繁殖する夏鳥です。
主な繁殖地は本州中部以北で、本州中部では高標高域の農耕地、
落葉広葉樹林、針広混交林に、東北地方以北では低標高域の市街地や
農耕地に生息しています。
図のように日本の中にも生息していない場所があったり、地域によって
生息環境が異なるのは、気温が関係しているのではないかと考えています。

全国鳥類繁殖分布調査報告(植田・植村 2021)より引用
コムクドリはスズメやシジュウカラと同じく樹洞で繁殖をする鳥です。
キツツキが作った古巣や巣箱も利用します。また、岩手県盛岡市で調査した際には、住宅の隙間や道路標識の柱の中でも繁殖していました。
スズメやシジュウカラよりも体が大きく攻撃的であるため、こうした
小鳥たちを追い出して巣を作ることがあります。ときには自分よりも体が
大きいアカゲラを追い出すこともあり、かわいい見た目とは裏腹に凶暴な
一面も持っています。


コムクドリを探してみよう!
北海道・東北地方
北海道では、5~6月に郊外の住宅地や公園、防風林で子育てをしている姿を観察できます。その後ムクドリと混じって群れを作り、9月上旬頃まで農耕地を中心に生活しています。
東北地方では、北と南で見られる場所に違いがあります。北東北地方では北海道同様5~6月に市街地や農耕地の混じる住宅地、公園、防風林で子育てをしている姿を観察できます。その後8月頃まではムクドリと混じってねぐらを取る姿を観察できます。
南東北地方では山形県内陸部を除いて、ほとんど繁殖していないと考えられています。例えば宮城県では、局所的に繁殖している場所がいくつかあるようなので、地元の日本野鳥の会支部の探鳥会に参加して情報を得ると良いでしょう。8~9月にはコムクドリは渡り時期に入るので、ムクドリのねぐらに混じったり、群れで渡る姿を観察できるはずです。
関東地方
一部の地域で生息が確認されていますが、繁殖はほとんどしていないと考えられます。観察できるのは4月上旬頃に南から渡ってくる時期と、7~9月の渡り時期です。特に7~9月は北から渡ってくる群れが入るため、本プロジェクトのコムクドリがいないかを注意深く観察していただけると嬉しいです。
中部地方
北陸では平地の海岸林などで、それより南では高標高域の農耕地や落葉広葉樹林、針広混交林で繁殖しています。繁殖している地域では5~6月頃に繁殖ペアを、東海などの繁殖していない地域では7~9月に渡りの群れを観察することができます。特に7~9月は北から渡ってくる群れが入るため、本プロジェクトのコムクドリがいないかを注意深く観察していただけると嬉しいです。
近畿地方以西
一部地域を除いて繁殖は確認されていません。一方で、7月以降に大規模な群れが9月頃まで滞在します。北から渡ってくる群れなので、本プロジェクトのコムクドリがいないかを注意深く観察していただけると嬉しいです。
沖縄は3月と9月に渡りの群れが通過します。数日しか見られないことが多いので、観察したい方はこまめに観察に出ることをオススメします。
ムクドリとの違いは?
意外と遠い親戚、ムクドリ Spodiopsar cineraceus
日本で繁殖するムクドリ類はコムクドリとムクドリの2種類です。どちらもムクドリ科ですが、属が異なります。系統樹を見ると実は遠く、2種の祖先が別れたのは約650万年前と言われています。
同じ日本に生息している2種は意外と遠い親戚なのです。

ムクドリってどんな鳥?
ムクドリは北海道東部を除いた全国に留鳥として一年中分布しています。
生息環境は主に農耕地で、コムクドリよりも開けた土地を好みます。
図のように全国各地に広く分布することに加えて、特に都市部では個体数が増加しているため、ねぐらでは騒音やフン害が発生しています。
また、初夏から秋にかけてはモモ、ナシ、ブドウ、かきなどの農作物への
被害をもたらし、害鳥として扱われています。

全国鳥類繁殖分布調査報告(植田・植村 2021)より引用
コムクドリも農業被害を出すの?
コムクドリは渡り鳥で、秋には大半が日本を離れているため、農業被害は
比 較的少ないと言われています。
一方でコムクドリは「桜鳥」と言われるほどサクラの実が大好きです。
そのため、サクランボ農家にとっては嫌われ者なのかもしれません…。
コムクドリとムクドリの関係性
私は、コムクドリとムクドリの関係性について、
盛岡市で3年間研究してきました。今回はその一端をご紹介します。
ムクドリはコムクドリにとって最大の敵!?
上述でコムクドリはアカゲラをも巣 から追い出すという話をしましたが、
ムクドリにはどうやら勝てないようです。
研究内の観察では、基本的にコムクドリがムクドリに対して攻撃をしている
場面を見ることはありませんでした。逆にムクドリはコムクドリを追い払ったり、巣を奪おうとしている場面を見ることがありました。

営巣する場所に注目すると、農耕地においてはムクドリの方がコムクドリよりも巣の高さが高く、市街地においてはコムクドリはムクドリよりもパイプを多く利用していました。高さが低いと外敵にやられやすく、パイプへの繁殖は中が暑くなることから不利だと考えられます。また、ムクドリは雨が入りづらい入り口が下向きの巣が多かったのに対し、コムクドリは上向きの巣も多くありました。このことから、コムクドリはムクドリとの種間競争に敗れた結果、仕方なく条件の悪い場所で繁殖していることが考えられました。



昨日の敵は今日の友?
繁殖期には争う2種ですが、夏以降は行動を共にすることが多いです。
特にねぐらはコムクドリとムクドリが一緒に利用することが多く、
群れで行動することで、捕食者に狙われるリスクを分散しています。
一方で仙台での観察では、捕食されにくい林の内側にムクドリが、
捕食されやすい外側にコムクドリが多く陣取っており、
やはりここでも種間競争が発生しているようでした…。

コムクドリの研究背景
コムクドリの研究史
コムクドリを研究した日本の研究をまとめてみました。

矢印は引用・被引用関係を表しています。赤いラインは被引用論文が本州中部で行われた研究、青い線は被引用論文が東北地方で行われた研究、緑のラインは被引用論文が北海道で行われた
研究を表しています。
研究の多くが本州中部で行われており、私が2025年に発表した論文は東北地方において約50年ぶりにコムクドリを研究した論文となりました。また、東北地方の生息環境を詳細に明らかにした初めての論文にもなりました。
このように、コムクドリが多く生息しているはずの北海道・東北地方においては研究が少なく、基礎研究が不足している状況です。本プロジェクトの研究はKoike et al. (2016)と同じく
コムクドリにロガーを装着して渡りを追うものですが、上述の通り本州中部と北海道・東北地方は生息環境が異なるため、Koike et al. (2016)と同じ結果になるとは限りません。
北海道・東北地方での研究を前に進めるためにも本プロジェクトは重要な研究なのです。
コムクドリ研究の課題
上記の通りコムクドリの研究が進んでいないのは、「コムクドリを研究する意義を見いだすことが難しいこと」が理由であると考えられます。
コムクドリは保全対象種でもなければ害鳥でもありません。保全管理の観点から見ると、
コムクドリの研究意義を見いだすことは難しいのです。
私自身もまだ、「コムクドリを研究する意義」を完全に見つけられているわけではありません。
一方で、「何の役に立つのか」「研究することにどんな意味があるのか」だけを考えて対象種を見ると、研究はつまらなくなってしまいます。
これまで分からなかったことを明らかにしていく、新たな事実を発見していく過程の中で、
「コムクドリを研究する意義」を見つけ出せればと考えています。
